新学期が始まりました。新年度1発目の職員会議から、子どもたちが来てからの2週間。てんやわんやで何をしてよいのかわからない先生。見通しは持ててはいるものの時間がない先生。この段階で途方に暮れ、半ばあきらめかけている先生。様々な状況の中で戦っていらっしゃることをお察しします。
ここでは、特に学級の1日の流し方に特化したお話ができればと思います。私自身が朝出勤してから児童が帰るまでに大切にしていた流れと視点についてお話していきます。もちろん、学校や都道府県によって時間帯ややっている内容が違うので、その点はご了承ください。
1学期の莫大な貯金で2・3学期は流せるようになる
学級システムはとても大事です。というより必須です。学級は、先生不在時に自分たちで1日を流せるようにしておく必要があります。緊急のことが起こったときに、先生の指示がなくてもスムーズに落ち着いて過ごすことができていれば、大きな問題なく過ごすことができるからです。先生も心を落ち着けてイレギュラーな出来事に対応できますし、子どもも同じように心を落ち着けて過ごすことができます。
先生が毎回指示を出しているようでは、2学期、3学期と時間が経つにつれ、先生の負担はどんどん増していくことになるでしょう。なぜなら、先生からの指示を待つ子どもが出来上がるため、何をするにも先生の声がなければ動かなくなるからです。そして、何を隠そう考えない子どもが育つからです。
考えなくなるということは、授業のどんな場面でも指示を待ち、友達関係の問題でも自己中心的な態度になっていきます。子どもの心が成長していないがゆえに、授業中の先生の指導は増え、教室内でも生徒指導問題が多発していきます。
そうならないために、子どもたちが毎日の生活を「自分たちの力でスムーズに送れている」と感じさせ、達成感や充実感を味わわせてあげましょう。そして、そのサイクルを習慣化させてしまいましょう。
そうなってしまえば、1年間ほぼ安泰です。毎日落ち着いて目の前の子どもの見取りをすることができるからです。
朝
子どもが登校する前にやること
- 今日の予定の確認(👈児童の動きと先生の動きをイメージ)
- 児童の下駄箱を確認(👈前日にチェック済みですが、念のためもう一度確認)
- 教室の環境が整っているかの確認(👈前日にチェック済みですが、念のため確認。窓、カーテン、机・椅子の整理整頓、床のゴミ、教材等が乱雑でないか、先生の机の上にも児童の机の上にも何ものっていない状態か)
- 宿題を出す場所、どうやって出すのか、教室に来たら何をするのかが決まっている(👈1年間変えない!)
- 黒板に一言(👈児童が気持ちよく、そして心新たにスタートできる内容を短く書きます。必要なら端的に支持もOK)
特に4番は、流れを明確にしましょう。
①ランドセルを片付けて宿題を開いて提出
②すぐさま連絡帳を書いて開いて提出
③委員会・係等の仕事をやる(予定係、手紙係、宿題チェック係、生き物係、配り係など)
④朝学習が始まる前に着席し、朝学習を自分たちで始める。(👈先生の指示は一切なし!代表児童がクラス全体に指示を出したり、個人で進めたりできるようにしておく。)
などです。
子どもが登校してからやること
- 教室に入ってくる児童の表情を見て挨拶をする。(👈気持ちよく挨拶が返ってきたらすかさずほめる!)
- 宿題の丸付けと連絡帳確認。(👈見るポイントを決めておき、1種類8秒以内に添削。8秒あればコメントも書けます。)
- 係の様子を見たり雑談をしたりしながら、児童が全員登校しているかを確認する。(👈不在の児童がおり、欠席連絡がない場合、保護者に必ず安否の確認をとらなくてはいけません。)
- 朝学習までに全員の宿題と連絡帳チェックを終え、全員に返却する。(👈できていない児童にはこの時間内に発見し、声掛けと指導を加えて、その場で対応します。)
朝学習
こちらが必要な時以外は先生が指示を出さない
たいていの学校では、朝学習の内容が1週間決まっていると思います。突然の対応は朝が一番厄介です。ですから、朝学習では先生がいなくても、課題がどこにあって、何をすればいいのかがわかっている状態にしてあげましょう。毎朝クラス代表などの係が仕切ってくれると、いつでもスムーズに流れます。
そして、「何をしたらいいかわからなくなったら、こんな風に考えて過ごせばいいんだよ」ということを年度の1日目に話して共通理解をしておきます。一番良いのは、そんな状況をあえて作ってあげて、子どもに実行させて、ほめる場面を作ってあげると活動が強固なものになります。
朝の会
短く!そして全員をやる気に!
朝の会は極力短く済ませましょう。
- あいさつ
- 声出し
- 健康観察
- 係から連絡
- 先生の話
全部通して5分以内に終わります。
特に、先生の話はどんなに多くても3つまで。時に多くの指示を出さなくてはいけない時もありますが、基本的に子どもは3つ以上覚えられないと考えていた方がいいです。
大人でも無理じゃないでしょうか。私はメモしないと無理です。メモさせるという手もありますが、おそらく全員が1年間続けることは難しいですし、児童の書く速さにも差があるはずなので続かなくなる可能性大です。
授業
移動教室で環境整備!始めと終わりのあいさつで切り替えスイッチON!
- 移動教室では机の上には何も置いていない状態にするよう指導します。👈帰ってきた後に気持ちよく再スタートできますし、「物がなくなった」「誰かに取られた」などの見えにくい生徒指導を未然に防止することができます。
- 始業のあいさつでは、声をしっかり出させること。👈声出しは学級経営の基本です。学級が荒れているクラスは声が出ません。声を安心して出せる雰囲気がないからです。声出しは4月の当初から当たり前にできるように、温かい雰囲気の中で何度も練習させてあげましょう。
- 終業の際は、チャイムと同時に気持ちよく挨拶ができるように指導しましょう。👈時間は必ず守ってあげましょう。授業の延長はNGです。
給食
給食指導を制する者は、学級を制する
給食指導は学級経営、そして学校経営の中でも最も重要な内容の一つです。給食は休み時間ではありません。何せ、「給食指導」という名前で明記されているのですから。給食はその名の通り「指導」です。
- 終わりのあいさつと同時に全員にすぐ準備させる👈トイレやろうかで話している児童、いつまでも手を洗っている児童がいないかを確認します。この時先生が丸つけなどもってのほかです(笑)この時間に丸付けやノートの添削をする特権をもっているのは、給食が児童だけで完璧に流せるようになっているクラスの担任だけです!
- 先生は児童の準備の動きを見ながら、食管の横に立って配膳の指示、観察。👈人間関係が崩れると、給食の配膳に差が出るようになります。些細な変化を見逃さず!
- 全員働いている状況を作る(働かざる者食うべからず!の精神で)
- どんな学年でも10分以内に準備👈私は毎年、子どもと一緒にタイマーで毎日準備時間を計っていました。6年生なら大体5分程度で30人分を準備し、「いただきます」のあいさつができます。1年間全て10分以内に準備ができたら乾杯していました。もちろん、乾杯の音頭は児童にお願いします。なかなかユニークな音頭をとるので、その時はすかさず本日の学級だよりのネタに。
- お代わりの仕方、減らし方をしっかり決めておく👈人によって差のある指導にならぬようにし、不信感を抱かれないようにしておく。先生がいなくても自分たちで平等に考えられる雰囲気を1学期に叩き込んでおきましょう。
- 片付けを誰がするのか明確にしておく👈どんな状況になっても片づけられるように決めておく。
- 食べかすが残っていないか食器を確認する👈6年生であっても、お皿のチェックをすることがあります。給食のワゴンは先生の確認が必須です。調理員さんが気持ちよく食管を受け取ることができるように、その都度子どもと一緒に片付けの重要性を確認しましょう。
こんな場面を想像してください。
4限目体育。終わりのあいさつをしようと全体に声をかけた。みんなが集まってくる中、何やら子ども同士がもめており、その中の児童が転倒。口から出血。するとすかさず4限目の終わりのチャイムが鳴る。
こんな時、真っ先に対応しなければならないのは目の前の怪我をしている児童です。
他の先生に応援を呼ばなくては!この子の歯は大丈夫か?!病院に行った方がいいのではないか?!
しかし、給食準備もしなくては!
ちょっと待て、今日は給食後にすぐさま集団下校訓練がある!!やばい!すぐに準備もさせないと間に合わない!
まてよ、この子は一体何をもめていたんだ?!
加害者は?!聞き取らないと!
担任教師は大パニックです。
この時に、自分たちで生活をスムーズに回しているクラスなら、先生が対応に追われ不在であっても、
①素早く着替えを済ませ、
②時間内に給食の準備をし、
③時間通りに食べ終わり、
④挨拶後にワゴンを運んで、
⑤時間を見て帰りの準備をし、
⑥静かに教室で待っている。
はずです。
中には気を利かせて教室にいない子の帰りの準備まで整えてくれていたりします。これが週末の金曜日なら、給食袋や体操服、水筒など忘れないように、みんなで声をかけ合っていたりもしています。時間が押せば、当然、帰りの会も済ませ、先生のお話だけを残した状態で待っています。時間の使い方が上手なクラスなら、空いている時間に何かクラスで進められる話をまとめていたり、みんなで簡単な掃除をしていたりもします。
もしこれが、毎回先生の指示を待っている児童の集団だったとしたら・・・
考えるだけでゾッとします。
先生不在の教室で再び問題が起こったら、二重苦三重苦では済まされません。大きな責任問題に発展します。
また、こんな緊急の場合は、教室に補欠で先生が入ってくださいます。システムが構築されているクラスに入った先生は、何にも指示をする必要がないので、子どもたちからゲストティーチャーのような扱いを受けます。
一方で、システムが構築されていないクラスに入った補欠の先生は、たった30分が2時間に感じられるほどのエネルギーを奪われ、てんやわんやで大声での指導を余儀なくされます。
これは学校にとってのダメージになってしまいます。
イレギュラーな状況に対して、冷静かつ迅速に、他のことに気を取られずに誠意をもって対応したいものです。
学校の大きなダメージに発展せぬよう、子どもたちが落ち着いて行動できるシステムを習慣化させておきましょう。
掃除
掃除がきちんとできるクラスの子たちは荒れない
服装や掃除の道具の使い方について、先生が子どもと一緒に掃除をしながら確認していきます。特に、高学年は下の学年を率いてまとめていく必要があるので、高学年には低学年との掃除のやり方なども確認します。
掃除がきちんとできる子たちのクラスが荒れているのを私は見たことがありません。もしあるなら、私はすごく興味があります。ということは、掃除をきちんとできる子に育てれば、クラスは落ち着いていくということです。掃除をすることでどんないいことがあるのかを子どもと話をするようにしています。
掃除は日本の学校固有の文化です。時代遅れという見方もされますが、人として大事なことを学べる日本の美しい精神が込められていると思います。そんな文化としての美しさや心の面を子どもに話してあげます。「掃除をしない国の学校がうらやましい」が子どものもともとの本音。そこを、「掃除をする国でよかった!」「掃除をしたい!」と思わせることができたなら、身の回りを美しく整えて生活ができる子に、そして心を落ち着けて物事に向かうことができる子にしてあげられるかもしれません。
帰りの会
短く!そして笑顔で!
- 帰りの準備1分30秒。
- 帰りの会1分。
合計2分半です。スクールバスがある学校もあると思うので、乗り遅れないようにすぐに子どもたちを返してあげます。
内容は
①あいさつ
②係からのお知らせ
③先生のお話
ジャンケンポン!!さよなら!
こんな程度で十分です。
最後の仕上げ
シメはやっぱり学級担任
子どもが次々と帰っていく中で必ずやるべきことがあります。
- 教室掃除👈え、さっき掃除しましたけど・・・いいえ、5,6限目に授業がありました。その間、消しゴムのかすが落ちたり再びホコリが舞ったりしているはずです。ですから、再度教室のゴミを取り除きます。教室にいる子どもたちと雑談をしながらやっていると、自然と子どもも一緒にゴミを拾ったり雑巾がけをしてくれたりします。自分たちの教室をきれいにするという意識や、美しいと気持ちがいいという感覚を覚えてもらう絶好のチャンスです。でも決して強要をしたり、誘ったりはしません。あくまで私のシゴトというように、淡々とやり続けます。そこで、参戦してくれた子どもの姿は、次の日にクラスの子どもにフィードバックして、「自分たちのためにありがとう」のお礼を伝えられるようにします。
- 机・椅子の整理整頓👈偏ったりずれたりしていないか確認します。変に隣同士の机が開いていたり、やけにくっついたりしていたりするなど、子どもの心の変化を見取ることができます。また、机にかかっている本バックがきちんとかかっているかや机の中が乱れていないかをチェックします。思わぬ変化に気づくことで、これから大問題に発展するかもしれない問題行動を未然に防ぐことができます。
- ロッカー内の確認👈机・椅子と同様、子どもの心の変化や習慣などがよく出る部分です。様子をよく観察し、ただ乱れているだけであると判断される場合には、次の日にしっかり美しくして帰るように子どもに声掛けをしましょう。
- 子どもたちの後に教室を出る👈子どもたちだけを残すと、思わぬ事故や問題行動が起こった際に対応が遅れます。先生は一番最後に教室を出るようにしましょう。窓の施錠、蛍光灯やエアコン等のスイッチが消えているかを同時に確認します。
- 下駄箱を確認👈子どもと一緒に雑談を交わして下駄箱まで送り届けると同時に、クラスの下駄箱の様子を確認します。靴はそろえて入れてあるか。そもそも2足そろっているか。かかとが踏まれていないか。何か変化があれば、そこから指導のアイデアを構築します。
- 全てを確認し終えたら、荷物を持ち職員室に行って任務完了。というか次の仕事へ。
いかがだったでしょうか。
1日の流れをざっと書いてみました。一つ一つのことが100%できなくとも、7割程度のことを時間通りにスムーズに流してあげることが大切です。
年度初めにシステムを構築して、1年間を安泰に。
先生方のご健闘を祈っています。