私はこれまで様々な子どもたちの担任をさせていただきました。
子どもの数よりももっと多い数の保護者の方々と関わらせていただきました。
子どもと関わる仕事である以上、保護者のとの関わりは必須です。子どもの後ろに必ず保護者がいらっしゃるということを常に考えて仕事をしていくことが大切です。ここでは私が日ごろ心がけていることを簡単に紹介します。
(1)子どもの姿を見て保護者が安心できるようにする。
子どもが学級で満足していれば、それが態度に現れます。自分の子どもが認められている。居心地が良さそうだ。単純に楽しそうだ。笑い話をいくつも持って帰ってくる。そんな状況が家庭で生まれるように、毎日何かしらの仕掛けを施していきます。学級での満足感は、問題行動やいじめ問題の未然防止につながります。少しでも子どもたちが存在意義を感じられる環境にしようと心がけています。
(2)学級の様子が分かるようにする。
学級通信は一つの良い方法です。私は毎年必ず200号以上学級通信を発行しますが、その時に考えていることは、「子どもの表情や教室で過ごしている生の様子を届けよう」ということです。写真があれば、人間関係が今どうなっているかがわかるので、保護者との話題にもできますし、通信を持って帰った子どもと保護者が軽く話をするツールにもなります。
(3)早期発見・早期対応で連絡を密にする。
何かが起こったときや異変に気付いた時には、できるだけ早く電話や家庭訪問をします。状況をよく確認し、当然ながら学校判断で動く場面が多々ありますが、「スピード命」を心がけています。保護者の立場として、何か不安を感じたまま時間が経つことほどしんどいものはありません。できるだけ早く解消したいものです。そのまま仕事場に行ったり、週末を越したりするのはよからぬ考えを膨らませてしまうことにもつながります。ですから、すぐに動き、少しでも早く不安を解消しようと努めたり、一緒になって解決しようというこちらの意思を伝えたりしています。
(4)一人の人間として関わる
当たり前のことかもしれませんが、保護者対応が「業務」になってしまうと、どうしても心無い行動や言動が出てしまいます。早くこなしたい、早く解決したい、決まりだから伝える、のような気持ちが先行すると、保護者との関係はうまくいきません。そもそも「人との関わり合いである」ということを前提に、学校の教師と保護者という立場を保ちながら誠実に関わるべきだと思います。これは子どもも同じ。「人との関わり合いである」ということを前提にして、学校の教師と児童という立場を保ちながら、発達段階を考えて誠実に接していくものです。
これまでこの職を続けてきて、たった一つ言えることは、私は本当に光栄であったということです。
いつかこのサイトでぼやいた「ラッキーマン」だと思います。
なぜなら、保護者に恵まれてきたからです。
仕事をする上で、これは本当に大きいです。
担任は、学級の子どもたちが落ち着いて過ごしていたり、アンケートや日ごろの子どもたちの反応等で、学校生活の満足度が非常に高かったりすると、あたかも全てが自分の実力であるかのような錯覚に陥ることがあります。
しかし、本当にそうでしょうか。
私は、違うと思います。
極端に言えば、その結果は「たまたま」です。
私はいつもそう思うようにしています。
もちろん自分が一生懸命頑張ったことが、
「保護者が安心し、子どもたちがやる気になるきっかけにつながっていたらいいな」
とは思います。
しかし、それを証明することはできません。アンケートでの高い満足度、そして子どもや保護者の感触の良い反応だって、結局はただの感覚によるものです。自己満足の世界です。
何事もなく学校生活が流れるのは、教育活動に対して多くの保護者にご理解をいただいているからできていることです。普段の学校生活が「寛大な保護者の理解のもとに成立している」ということは、学校という現場で働く者なら、しっかりと心得ておくべきことだと思います。
わかっています。
そんな簡単な問題ではない地域だってありますし、学校側が本当に困ってしまう保護者だっていらっしゃいます。そういった事例に何度も出くわしたり、話で何度も聞いたりしたこともあります。
同然ながら私も、保護者とのやり取りで苦しんだ経験があります。
しかし、その経験が「本当に貴重だったな」と今思えるのは、何年にもわたって多くの保護者から「未熟な自分を温かく見ていただけた」という自覚があるからだと思います。また、自分の所属する学校を「温かい目で見てくださっているなあ」と感じることができるからです。もっと言えば、現在の公教育に対して「寛大な心を持ってくださっているなあ」と思える場面があるからです。
そして、そう思うようにしてきたからだと思います。
最近では、立場上、頭を悩ませてしまう事例をいくつも聞くようになったことは事実です。
現場でできる範囲を優に超えてきます。でも同時に、公教育と世の中の流れの差が生み出す問題であると感じる部分もあります。
現場にいる以上、対応しないわけにはいきません。ですから、起こさないでいい問題は、起きないように未然防止をするのが最も良い対応であると考えています。その一番の力になるのが、
保護者の力
です。
保護者からの理解があれば、はっきり言って無敵です。
一人の人間として、どんなに小さいと思えることに対しても、誠実に接していきましょう。